痛みとしびれ

 私が痛みやしびれに対して結果を出したいと強く思うことには理由がある。私自身が痛みやしびれでこれからどうしたらいいんだろうと途方に暮れたことがあったからだ。

 30歳頃、飛行機に14時間近く乗り帰国して、実家で布団を敷いて就寝した。朝起きると腰になんだかすごく違和感がある。時間が経っても違和感はとれない。次の日病院に行った。ヘルニアだと言われた。鎮痛剤をもらいリハビリするようにとのこと。違和感はとれない。帰国してすぐだったので、仕事をしていたわけでもないため、のんびり過ごしているうちに1ヶ月位してある程度動けるようなった。違和感はうっすら残っていたが。

 その後も天気が悪かったり荷物を運んだりすると腰の違和感は強くなるので、気をつけて生活していた。それから何年も経ち、作業療法士になった。病院で働くようになると患者さんの移乗を行ったりするため、細心の注意を払って腰を保護していた。しかし注意を払っていても腰への負担は大きく、毎日の積み重ねで一瞬ではあるが「あれ?立ち上がれない…?」「あれ?歩けない…?」ということが度重なった。ある日のお昼過ぎくらいにいやな予感がした。今はいいけど明日まずいことになりそうな…。案の定、朝起きようとするとベッドから身体を起こすことができない。それどころか寝返りもままならない。しかしトイレに行きたい…。大事な仕事、トイレに行きたいのに…。必死で寝返ったが立ち上がれないので這ってトイレまで行った。腰を庇いながらずるずる這ったのでなかなか前に進まなかったが、とりあえず間に合った。間に合ったからまぁいいか、あはは…、あっ!またベッドに戻るのに這うのね、あはは…。結局1週間立ち上がれず歩けずだったため、ずっと這ってトイレに行っていた。身体を動かすことがものすごく苦痛だったためトイレに行きたくない。水分をとるとトイレに行かなくちゃいけなくなるなぁ…でも水分不足はもっとまずいなぁ…うーん、難儀だなぁと思っていた。(当時のうちのトイレは和式だったし。)痛みもつらかったが、しびれはやるせなかった。右腿がしびれて感覚があまりなくなっていた。痛みよりもしびれがやるせなくて眠れなかった。すこし動けるようになって薬を処方してもらった。痛みとしびれに対しての薬なのだが、飲むとひたすら寝てしまう。眠気がすごくて起きていられない。起きていても朦朧としていて自分じゃないみたいだった。病休を2ヶ月もらっていたのだが、2ヶ月後に仕事復帰できるのだろうか?復帰できるとはとても思えない。貴族じゃないので働かないと生きていけない。どうしたらいいんだろう…。作業療法士としてこれから働くことができるんだろうか?あんなに苦労して国家試験通ったのに…。いろんな考えがぐるぐる頭の中を駆け巡っていたが、気分が滅入っただけだった。

 と、長くなったので結果から言うといろいろありながらも2ヶ月後に仕事復帰した。もちろん皆さんに助けていただきながらだったが。その時、私は強く思った。仕事復帰できた以上、痛みやしびれに対して結果を出せないリハビリなんて絶対に駄目だと。結果を出すリハビリをしたいと。「すごく痛いんです」「しびれがひどいんです」「からだを起せないんです」これらの言葉を聞くと、這ってトイレに行っていた日々を思い出し他人事とは思えない。絶対に結果を出す!と心の中で静かに闘志を燃やす。(←いつもへらへら笑っているのでまず気付かれないが)